勿忘草の咲く町で 〜安曇野診療記〜(著:夏川草介)【読書感想】

 

 

 

※本の内容のネタバレを含みます※

 

 

 

「神様のカルテ」で有名な著者の新作本♪

なんですが、私は「神様のカルテ」を読んだことがなく(メディアミックスされたものも、見たことがありません)、、、この著者の本は初めて読みました。が、とても面白かったです!

 

物語の舞台は長野県の田舎にある小さな一般病院・梓川病院。

第一話・第三話は三年目の病棟看護師の美琴視点でのお話。第二話・第四話は実家が花屋の一年目研修医の桂先生視点でのお話でした。

 

梓川病院は田舎の小さな病院ということで、地域の高齢化の影響をモロにくらっており、そこに入院している患者さんの多くは高齢者。

私が病院勤めしていた頃も「高齢の患者さんばかりだなあ」と思っていたけど、梓川病院はその比じゃないレベルの高齢者率です。

作中で95歳の患者にERCP(侵襲度の高い内視鏡的治療)を行なっていたことにビビりましたが……

8割が80歳越えで、会話ができるのが半分以下、“辻褄の合う会話”ができる患者はそのまた半分以下だそうです。要するに、意識障害やら認知症やらのオンパレードっていうことですね……。色々すごい。

 

ということで、この本一冊を通しての大きなテーマは、【高齢者医療】でした。

 

看取りの出来事や、延命治療をどこまでするか論、など。話の内容としては、非常に重い。

でも重いんだけど、本全体で読むとそこまで重苦しい感じではなく。わりとスラスラと読み進めることができたのは、美琴と桂先生の恋愛模様がかなり軽いタッチで描かれていたからかな。読みやすかったです。

 

各話の内容を簡潔にまとめると、

第一話は、妻子を持つ48歳膵臓癌患者の看取りの話。

第二話は、死神と呼ばれている循環器内科の医師……寿命だと判断した患者へは絶対に延命治療をしない方針の医師のお話。

第三話は、高齢患者の誤嚥による窒息死が病棟で起こってしまった話。

第四話は、高齢患者への治療に対する家族のあり方についての話。

でした。

 

個人的には第四話の「胃瘻」についての話が、とても胸に刺さるものがありました。

意識のない患者さんへの胃瘻での栄養剤投与。それによって生かされている患者さん。働いていた時に、私もたくさん看ました。そしてどこかモヤモヤする気持ちを抱えていましたが……その正体が分かったというか。

桂先生の指導医である、三島先生の言葉。「胃瘻の問題は、それを作らなければ、患者が死ぬという点にある」「寝たきりの患者に胃瘻を作るのはかわいそうだと言うことは簡単なことだ。しかし胃瘻がなければ患者は死ぬことになる」 そう、これが全てなんですよね。

そして治療方針を確認すると、「全部やってくれ」「難しいことを言われてもわからない」と、その言葉だけを振りかざす家族。「そうそう。こういう家族、いたいた〜!」って思いました。

これも当時めっちゃモヤっていたんですが……「全部やってくれ」という言葉それ自体が問題なのではなく、「そういう言葉によって、悩むこと、考えることそのものを停止している」ことが問題である。家族がそういう反応をしてしまう原因は「死に無関心な人々が突然、身近な人の死に直面すれば当然のごとく混乱する」から。「思考を停止し、すべてを医師に押し付けて見て見ぬふりをする」という行動になるのだということ。それが「現代医療の闇」だと。

なるほどなあ、と思いました。

 

様々な出来事を通して成長していく美琴と桂先生の姿は、とても素敵だったし、

高齢者医療においては、「正解」があることはなく、だからこそ難しいのだということを再確認することができた、良い本でした。

医療にあまり触れたことがない方にとっても、読んだら命のあり方について考えるきっかけになるような本の内容なんじゃないかなあ、と思います。

 

 

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