昨夜のカレー、明日のパン(著:木皿泉)【読書感想】

 

 

 

※本の内容のネタバレを含みます※

 

 

 

短編集ではあるんだけど、すべての物語が若くして亡くなった一樹を中心としている物語。

何人もの登場人物が出てきますが、みんながどこかで繋がっていて……というお話でした。

著者がもともとは脚本家さんだからか、情景描写が目に浮かぶような描かれ方で、そしてその情景が美しく、とても読みやすかったです。

 

主人公は一樹の嫁と父親。なんとこのふたり、お互いを「テツコさん」「ギフ」と呼びながら2人で暮らしています。(母親は、一樹が亡くなる前に亡くなっています)

旦那が亡くなった後に義父と2人で暮らすって、私にはちょっと意味が分からない状態ではあるのですが、そういうもんなんですかね……?

意味は分からないんだけど、お互いに干渉しすぎず適切な距離感を保ちながら、でも思いやり合っていて生活を共にしているところが、すごく魅力的だと思いました。こういう人間関係って、希少だと思います。羨ましいぐらい。

そんな2人の関係性が和やかに描かれていたところが、特に面白かったです。

 

あと、ギフのキャラクターがとても可愛い。女に騙されて高級家具を買わされて、それをテツコに隠そうとしたり、どうしようもない面もあるんだけど、憎めない感じ。

このギフを筆頭に、物語の登場人物が、みんな「良い人」で。

妻、父親、従兄弟、、、と、それぞれがそれぞれの日常を送る中、それぞれの形で一樹の死を受け入れていくんですけど、

当然のことではあるんだけど、同じ人物の死なのにみんな捉え方が違ったのが、興味深かったです。

個人的には、「この世から、パッて。あとかたもなく消えちまった」と一樹のことを話すギフに、隣の家に住む元CAが元同僚に頼んで遺品を搭乗時に持ってもらって、「消えてしまったんじゃない」「今も空から見ている」と伝えるお話が、好きでした。

 

クスッと笑えるような場面も多くて、全体的に、例えるならばホームドラマみたいな感じの物語の本だなあと思いました。

この本のキャッチコピーには「感動作」と書いてありましたが、感動というよりかは、どれもが心が温かくなるようなお話という印象。

 

最後の章が、一樹視点でのお話だったのも、面白かったです。

しかも本のタイトルに由来するお話だったので、読んでいて「おお〜!」と思いました。