神の手(著:久坂部羊)【読書感想】

 

 

 

※本の内容のネタバレを含みます※

 

 

 

安楽死を題材にした小説。

安楽死の必要性と、逆に考えられるマイナス面。それらに加えて、安楽死を法制化するにあたっての困難と現在の医療界の問題点を描いた作品でした。

題材を盛り込みすぎな気もしますが、350ページ超えの本×2冊の長編なので、最後は物語がまとまっていたなあ、という印象でした。物語の途中で伏線もいっぱい張られていたけど、きれいに全部回収してくれたので、スッキリしましたし。

でも「安楽死」というテーマの性質上、当たり前ではあるんだけど……話が終始重かったです。

 

著者が医師だということもあり、臨床の描写はすごくリアル!

癌患者の最期とか、選択肢としての安楽死の必要性とかは、めっちゃ共感しました。

実際に私も何人もの末期の患者さんを見てきたけど、延命治療を希望する方はごく僅かだった。

でも実際に「安楽死を認める法律を制定する」となると怖いなと思うし(実際、2020年現在の日本では、安楽死を認める法律は制定されていないですし)、その危険性も納得できるんだけど、

私がもともと医療者側の人間なこともあり、安楽死法阻止連が「わずかでも可能性があるなら最後までベストを尽くすべきだ」と「助かる見込みが少ない患者にも、最後まで諦めずに人工呼吸器を使用するべき」と言う主張などの理想論は、マジ読んでいてイラつくというか、憤りを感じました。本当、現場を全く知らない人間が何言ってんの、って感じ。そもそも癌末期患者への延命治療と、敗血症への延命治療じゃあ、全く別物だしね。。

なんだけど、さまざまな視点で見た「安楽死」についてが描かれていて。特に「もしも安楽死を認める法律が制定されたら、家族や介護者などの考えに引きづられて、本来なら生きたいと願っている人が安楽死を選んでしまうかもしれない」という可能性もあることなど、「こういう考え方や危険性もあるのか」と初めて気がつかされた部分もあり。色々と考えさせられました。やっぱり難しい問題だよね〜。

 

物語内では最終的には安楽死を認める法律が制定されたのですが、その過程で法制定のいざこざに絡んで人が死にすぎで、、、というか、正直私は政界のことにはあまり興味がないので、そこら辺について描かれていた部分は読むのがわりとしんどかったのですが(これは完全に私個人の問題ですね;;)、安楽死法の制定に大きく関わっていた「センセイ」は意外でびっくりしました。

結局、「安楽死を認める法律を作るという話の前に、安楽死の薬があった」という終わり方かー。

ラストで村尾が「白川先生にもきっとこれが、必要なときが来ますから……!」と言い、安楽死薬の試供品を手渡す描写は、ゾッとしました。