明るい夜に出かけて(著:佐藤多佳子)【読書感想】

 

 

 

※本の内容のネタバレを含みます※

 

 

 

この作家さんの作品を読んだのは、今回が初めてでした。

本を読み始めた時は「句点の置き方がちょっと私に合わない文体かな……」と思ったのですが、実際読み進めていくと引き付けられる文章と内容で、とても面白かったです。

 

物語は、地の文章のすべて主人公である大学休学中の男子の心の声で描かれていたのですが、

舞台も現代だし若い男子だしということで、すごく砕けた表現が多数で、分かりやすいしサクサクと読めるようなテイスト。

パッと読んだだけだと「ライトノベルみたいだな」と思えるようなペラい文章のようにも感じられるんだけど、そうでもなく。

砕けた表現ながら、この微妙な年代の微妙な心理が上手いこと描かれているなあ〜と、感心させられました。(って書くと、すごく上から目線ですね……;;)

 

この本は、大雑把にまとめると、主人公が新しい出会いを経験し他人と関わり、成長をしていく姿が描かれた物語でした。

……とは言っても、「成長」っていう言葉がぴったりと当てはまるとは言い難いんですよね。そしてそこが面白かった。

物語の最初と最後では、主人公は確実に変わっているんですよ。

でもどこかが劇的に変わったというわけではないんです。

主人公のトラウマが解消されたわけでもない。前向きになったわけでもない。何か大事件が起こったわけではない。

ただちょっとだけ息をするのが上手になったかな? って感じ。止まっていた時間が動き始めたというか。

そう。決して派手ではない物語だったのですが。

そういった些細な変化がこの主人公にとっては大きいもので。

だからこそ、主人公の感情の動きにリアリティを感じたし、些細な変化が本当にとても自然に描かれていたんだよね〜。

 

物語上で主人公が出会い深く関わった人物は、3人いました。

その3人とも、主人公との共通点があまりなく、家族構成や出身などの詳しいことはお互いに知らなくて、「友達」と言い切っていいのかも分からない関係。

それを「ちょっとビックリ。でも、いいんだよ。鹿沢がどんなふうに〜かを知ってるし」と主人公が語っていたのも、また良かったです。

そういう関係って憧れもあるよね、という気持ちが私にあることもあり。主人公とこの3人との関係性はとても魅力的なものに思えました。

4人集まって交わしている会話を読んでいると、なんだかまさに「青春!」って感じがした。

 

ところでこの物語では、主人公が昔から今も心の拠り所にしているのが「深夜ラジオ」ということで、深夜ラジオについて描かれている場面がめちゃめちゃ多かったのですが、

私は深夜ラジオはw-inds.やSPEEDの特番ANNを聞いたことがあるくらいで全く詳しくないけど、深夜ラジオの番組内の雰囲気とか楽しみ方とか投稿職人さんの気持ちとかが伝わってきたし、読んでいて自分もラジオを聞いているような気持ちになりました。

特に実際に放送されていたニッポン放送の番組「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」が、番組内容含め多ページに渡り書かれていたので、この番組好きだった方にはたまらないんじゃないかな〜と思います。