木漏れ日に泳ぐ魚(著:恩田陸)【読書感想】

 

 

 

※本の内容のネタバレを含みます※

 

 

 

結構前に出版された作品ですが(2010年)、今更読了〜♪

読んで「恩田先生って色んな作風が書ける作家さんなんだなあ」と思いました。

タイトルが詩的な雰囲気のタイトルで、あらすじから「恋愛小説かな〜」と思いながら読み始めたんですが、全然違ったw

否、恋愛小説は恋愛小説なんですが……甘酸っぱい系のものではなく、恋愛における苦しい部分を凝縮して書かれたものだなあ、と感じました。つまるところは、この物語は別れ話をする男女の物話、だしねえ。

文庫でかつ300ページにも満たないという短い作品なんですが、読み応えはとてもありました!

 

 

まず、話の設定が面白かったです。

実際の登場人物は、なんと最初から最後まで、別れ話をする男女2人だけ!

「2人の会話で、これまでの2人を振り返っていく」ということに終始していました。すごい!

しかも、夜になり互いに向き合って会話をするところから始まり、物語は「ついに、太陽が姿を表したのだ」で終わる……という、たった一晩だけの出来事を描いた作品なのに、それにしてはこの男女の感情の移り変わりが大きく、その2人の感情を深く掘り下げて描いているところが、良かった。

 

会話が中心なので、序盤は何がなんだか分からないというか、読者には話の本筋が全く分からない感じではあるのですが。

2人が会話を重ねることにより、どうやって2人は出会ったか、お互いをどう思っているのか、どういう付き合いをしていたのか、どうして別れる話になったのか……等が、2人の間にあった出来事とともに次々に明らかになっていく。そしてその中で、2人の感情も変化していく。という話の展開が秀一で。引き付けられました。

 

ただ、2人の間にあった出来事を2人で推測していく場面もあったのですが、それが飛躍していたというか。

換気扇の音から、いきなり山の中での虫の音を思い出したりとか。父親の死の真実や本当の2人の関係といった重要な事柄も、彼らの(わりと強引な)想像のみで真実を決めつけていて、本当の真実は分からないままだったりとか。

そういう部分が気になりましたが……でもおそらくこの物語の主題は2人の男女の心理の移り変わりとか、そういうものかなという印象を全文読んで感じたので、本当の真実を追い求めたりするとミステリーになっちゃうから、これはこれでそうあるべき形だったのかな、という気もしました。

 

心理描写は流石の恩田先生で、短い話なのに丁寧・繊細で、とても良かったです。

男女ともに私とは全く違うタイプだったので、共感は全くできなかったのですが、特に主人公のアキが「急速に、彼に対する興味を失いつつあった」となるまでの感情の流れ、「好きなふりをする」自分の恋愛を自覚してからの「死は生のひとつ」と呟く感情の描き方が、すごいなと思いました。深いし、納得できる。

そして綺麗な別れ方の2人ではなかったのに、物語的には綺麗にまとまっているのも、面白かったなと思いました。