その日、朱音は空を飛んだ(著:武田綾乃)【読書感想】

 

 

 

※本の内容のネタバレを含みます※

 

 

 

面白かった……!!!

 

タイトル通り、「朱音」という女子高生が高校で飛び降り自殺をすることから始まり、その自殺の真相を探っていく物語なのですが、構成がとても面白かったのと、各キャラクターの微妙な心理やその関係性の描かれ方が秀逸すぎて、本当に面白かったです。

 

本の構成としては、「青春群像劇」っていうのが一番近いかな?

ミステリーの分類でもあると思うけど。。

 

プロローグで朱音の自殺の場面が客観的に描かれて、一章から六章まではそれぞれ別のキャラクターの視点(全員が朱音と同学年の男女。章が進むにつれて、だんだんと朱音に近い関係性のキャラクターの視点になっていきます)でこの自殺の前後の出来事を描いていて。最後の七章で朱音の視点での物語。エピローグでは、朱音視点での自殺の場面が描かれていました。

(……なんだかすごく分かりづらい日本語になっちゃいましたが、伝わります??)

 

一章から六章の冒頭には、各キャラクターが解答した「自殺に関するアンケート」付き。

章の最後に、章のタイトルが書かれているんだけど、その形式も面白かったです。全てぴったりのタイトルすぎ。

 

あと面白かったのが、一章から六章まで、だいたい同じ時間軸の出来事が描かれているところ。

視点となるキャラクターが変わると、出来事ってこんなにも変わるのか、っていうのが凄い。

そして7人ものキャラクターの視点が描かれているから、登場人物のどの子も長所と短所……っていうのかな。誰しも自分本意な部分があるし良い面も悪い面もあるということを、まざまざと突きつけられる感じが凄かった。この微妙なキャラクター描写、心理描写が繊細で、とても良かったです。

 

しかし一章から五章まで読んで、朱音のクラスメイトの性格がだいたい分かるのに、肝心の朱音自身の人間性が全く分からないなあと思っていたら……

六章にして初めて分かる、(言葉がちょう悪いけど)朱音のガチメンヘラっぷりにびっくり。

幼馴染に完全に依存した上で、かなり歪んだ友愛をぶつけていて、「ひい!」と思いました。

「別の高校に行きたい」って言ったら自殺未遂する幼馴染とか、怖すぎるって……。

と思ったら、七章の朱音視点のお話を読むと、(気質的な問題はあるにせよ)ああいう風にしか生きられなかったんだろうなあ、朱音にとってこの世界はすごく生きづらかったんだろうなあ、とも思ったり。

 

したと思ったら、エピローグが!まさかの!!!

莉苑お前そういうことだったのかよ!!!

っていう感じ。

 

これだけじゃ何も伝わらないとは思いますが(…)すごいオチだった……。

オチを隠すつもりはないんだけど……最後のあの莉苑の行動とその意味を端的に説明できるほどの語彙力が、私にはない。

けど、読み終わったあとに、背筋に寒気が……。

ええ、読後感は非常に悪かったのです。

いちばん最後のページの「だから何?」という手書きの文字で、トドメをさされた。

でも面白かった。一気読みでした。

そして最後まで読み終えたあと、莉苑の章と朱音の章を何回も読み返してしまいました。

 

莉苑の「世界は生きている人間のためにあるべき」という信念。

それが朱音の渾身の(?)自殺を全くの意味のないものにしてしまうなんて……。なんて残酷。

でも莉苑に悪気があったわけでは決してなく、彼女は彼女の信念に従っただけであり、事実彼女の行動のおかげで朱音以外の人物はこれから先もきっと前を向いて生きていける。

私自身にしても、彼女の合理的な考え方は嫌いじゃないし、むしろ好きな部類でもある。

だけど……自殺から始まる物語なので、朱音が死なずにすむ方法はなかったのかなっていうことを考えても無意味ではあるんですが、なんか、こう、もうちょっとどうにかならなかったのかな、って思ってしまいます。

純佳や莉苑、博以外の、他人事感もすごかったし、、、実際もこんなもんなのかなあ。悲しいなあ……。

これは、「自殺なんてするもんじゃないよ」「自殺したって、自分の思いが必ずしも周囲に届くわけじゃない」という作者なりのメッセージを描いた故の結末なのでしょうか。うーん。

色々と考えさせられる本でした。

 

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